その日その時、一日だけ
「わたしたちの社会には、今を生きることを教えてくれるものが全くありま
せん。この社会のあらゆるものはこの問題を避けて通っています。学校には
いった時から、親や先生は、さあ次の用意をしなさいといい続けます。大学に
はいると、さあ次は、という圧力が強くなります。幼い時から、先のことを考
えるようにならされて、その考え方をどこへ行ってもあてはめるのです。これ
は考え方の型になりました。どこかへ到達することを望みますが、どこでもい
いのです。いつか、自分を夢中にしてくれる人が現れるのを待ち望み、それが
終わると、子どもが大きくなって手が離れることを、次には退職する日を待ち
望みます。いつも宙ぶらりんで、待ち望んでいた日がいざ来てみるとそれは今
日と少しも変わらないことに気付かされるのです」。
「もっと大きな喜びや意識を持って、また高められた自覚を持って生き、そ
れによって、一刻一刻を掘り下げ、それを満足感で満たすという、異なった種
類の生活を育むことができるはずです。いやできなければなりません。わたし
たちは一刻一刻を軽く見て、明日に目を向けますが、今わたしたちの手中に
あって、可能性を秘めてふるえているのは、この瞬間であって、まだ訪れてい
ない将来ではありません。一刻を味わい、注意を払って今の瞬間を生きてはじ
めて、わたしたちは本当に生きていると言えるのです」。
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わたしたちが接する自然や、出会う人々。もしそれに出会うことが最後の機
会になるのであれば、その機会を良い思い出として残したいのではないでしょ
うか。そのように見方を少し変化させてみると、毎日のありふれた光景が色彩
を変えてくることが分かるでしょう。確かにわたしたちの世界は多くの驚嘆す
べき事柄で満ちていることが述べられています。壮大なもの、小さなもの、精
巧なもの、それらは確かにわたしたちの心をとらえますが、それに加えて簡単
な物事の大切さが強調して述べられています。
この記事ではさらに、成功は行程であり目的地ではないことを洞察していま
す。
わたしたちが何かをする時、目標だけに目を留めてそれを追い求めるのでは
なく、その途中の過程を味わい深いものにするように薦めています。例えば山
を登るのであれば、途中の景色や動物、植物、人々との出会いを大切にしてい
くことができるのです。
そのような簡単で小さな事柄に含まれている輝きを見いだせる人は、一瞬の
大切さを知っている幸福な人なのでしょう。