傷ついた内なる人が作り上げる人格の型
機能不全の家庭の中で生き延びていくために共依存的な自己は様々のタイプ
を取っていきます。わたしたちがこれを掲げるのは、誰かをこのタイプだと決
めつけるためにではなく、こうならざるを得なかった苦しさを理解するためで
す。また相手によってタイプをかえることがあるので、以下のタイプは一人の
中に混在することもあります。
誰かが家を出たりすると兄弟の間で役割の交代が行われることもあります。こ
れらの役割は厳しい環境を生き残るための自衛の手段だったのですが、自分の
家を出て、その環境から離れてもなおも生き続けて、その後の生活を生きにく
くさせています。
①ヒーロー(責任をとる型)
小さいうちから現実的な目標を立てて、普通の人より早々とそれを達成して
いきます。これはその人に、評判や名声を与えますが、その中でじわじわと問
題が進行していきます。不安が増し、緊張の高まりを感じ、周囲の人々との間
に見えない壁を感じていきます。リラックスすることや冗談が苦手で、人の中
では居心地悪く感じます。何でも物事を取り仕切らないと落ち着かず、人間関
係では上下の関係をはっきりさせようとします。並列な立場に立つことは、コ
ントロールを放棄してしまうことになり、それは生き残ることを放棄すること
と同じくらい危険に感じます。人間関係が固く窮屈なので、オープンで分かち
合う親密さを基調とした対人関係は苦手で、そこから逃げ出したいと感じま
す。寂しさを紛らわせるためにアルコールや他の嗜癖に走ることもあり自分の
管轄下にある人々を暴力や刺すような言葉で支配しようとすることもありま
す。②ロストチャイルド(順応する型)
子どものうちに、問題があるとどこかに隠れて過ごすことが楽だったという
ような経験をした人たちは、大人になってもこの方法を使います。何か決定を
しなければならない事態を避け、問題を聞かなかった振りをしたりします。何
が起こっても無難に切り抜ける名人です。このタイプの人は自分の居場所を知
られないように、家にいてもなるべく家族との関わりを避けます。自分の本当
の問題に直面したり、自分の感情をきちんと分析したりはしません。人とうま
くやることは出来ても人を信じることを難しく感じます。ゲームにのめり込ん
だり自己否定的な順応を続けていくと、抑うつ的になり孤独に陥ります。
③イネブラー(慰め役)
他の人の情緒的な必要を満たすことに忙しかった子供時代を過ごしたため
に、他人の感情に大変敏感で、世話焼きで人の悩みを良く聞くことが子供時代
から顕著です。そして大人になっても他の人の世話をし続けます。他の人を良
い気分にすることに長けているため、世話を必要とする人に自然に惹きつけら
れてしまいます。このように慰め役をしながら育った人は、人の感情は良く理
解できても、自分の必要がなんなのか分かりません。かえって自分の必要を満
たそうとすると、罪悪感が出てきて不安になります。強迫的に自分を犠牲にし
続けること、それが安心感を与えるのです。
④マスコツト、クラン(道化役)
緊張しがちだった家庭を和らげるために、必死でおもしろいことを考えたり
行ったりします。明るい雰囲気を持っていますが自分に満足しているわけでは
ありません。場を盛り上げることはうまくても、自分はどこか受け入れられて
いないと感じてしまいます。本当の自分、自分の感情に直面することは苦手で
す。
⑤スケープゴート(非行に走る型)
子供の時も、大人になってからも自分に対して良い感情を持てず、自分の要
求を表現することもうまくできません。絶えず怒りを感じ、周囲にトラブルを
起こし続けます。実際にはアルコール依存の父親とそれを支えている母親にこ
そ、この家の問題の真の原因であるにもかかわらず、「この子のせいでこの家
には問題が絶えない」と言われ、非難を一身に担う身代わりの山羊です。彼ら
は同じ性格を持つ子供たちに引き寄せられて仲間集団を作ります。肯定的な役
割モデルを果たすことに興味がないので、破壊的になり、孤立していきます。
回復する機会がないと、世の中の裏道を歩き続けることになります。